株式会社夢実堂
台風による被災を乗り越え 2倍近くの農地拡大へ
宮城県黒川郡
- 従業員数:11〜50名
- 売上規模:1億〜3億円
宮城県黒川郡大郷町に拠点を置く株式会社夢実堂(ゆめみどう)は、果実堂と同じくベビーリーフの栽培に取り組む農業法人です。東北エリア最大級のベビーリーフ農家として知られ、現在74棟のハウスを保有。そのうち23棟は「高瀬式高機能ビニールハウス」が導入されています。
代表の岡田卓也さんは、2012年に実家が手掛けるアグリ事業「夢実堂」の代表に就任しました。経営の道のりは決して平坦ではなく、生産量の向上に関する課題や令和元年東日本台風による甚大な被害など、さまざまな困難に直面しました。
そうした厳しい状況を果実堂とともに乗り越えてきた岡田さんに、今回お話を伺いました。
- 目的
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- ベビーリーフの生産量向上
- 課題
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- 夏の高温時・冬の降雪時にかかわらず回転率を上げる
- 効果
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- 降雪のある、東北エリアにあって回転率は年間最大12回に
- 生産量の向上を実現

果実堂での経験が今も軸になっている
私が農業を始めたきっかけは、父と果実堂の創業者との縁をきっかけに、果実堂に入社したことでした。当時は設立して間もなく、果実堂の成長のファーストステップの頃で、いろいろな経験をさせていただきました。そして、ほぼ同じ時期に果実堂にコンサルタントとして関わっていた高瀬さんと知り合いました。
当時、私は仕事に対する意識があまり高くなかったように思います。そのため高瀬さんのストイックな仕事ぶりや栽培に向き合う姿勢、そして理路整然とした科学的な考え方に強く感銘を受けました。
高瀬さんとの関わりが深まり、大分県の農場の管理を任されるようになった頃、自分でも「このままではいけない」と感じるようになりました。高瀬さんからは、考え方や姿勢のみならず、経営や管理についても多く学ぶことができました。これが転換期となり、今も自分の軸になっています。
その後、私は果実堂を退社し、2012年10月に実家の会社『夢実堂』の役員に就任しました。『夢実堂』は、2008年からアグリ事業を展開していた会社であり、私はその事業を引き継ぐ形となりました。


やっと軌道に乗ってきた矢先 台風によりハウスが水没
就任当初、夢実堂の経営は厳しく、グループ企業の補填によりなんとか経営を維持しているといった危機的状況でした。果実堂さんからもアドバイスをもらいながら、まずは生産量を増やすため、生産可能な場所の確保から取り掛かりました。遊休ハウスや遊休農地を可能な限り探し、役所などに交渉・相談を続けた期間は、約5年に及びました。
2018年、新たな土地を見つけて農地を拡大することができたのを機に、初めて高瀬式高機能ビニールハウスを導入しました。すでに回転率などの機能性は果実堂でも実証されていたため、一気に11棟を採用することができました。その頃には、経営も収支のバランスが徐々に整い始め、高瀬式ハウスが十分に稼働すれば売上も1億円に届く、と期待を高めていました。
しかし、その後わずか1年足らずの2019年10月。台風19号によって夢実堂の農地近くの川が氾濫し、ハウスが飲み込まれてしまいました。これにより、高瀬式ハウスを含む保有ハウスの約8割が倒壊しました。
この台風は関東、甲信越、東北地方に記録的な大雨をもたらし、「令和元年東日本台風」として甚大な被害を引き起こしました。状況はまさに「事実上ギブアップ」と言えるものでした。



選択肢は「続ける」の一択 被災後も農地拡大を実現
最初に相談をしたのは高瀬さんでした。倒壊したハウスの写真を送り現状を報告した際、「絶対続けような」と声を掛けられました。自分の中ではそこから「辞める」という選択肢がなくなりました。おそらく、周りのグループ会社の人たちは「いよいよ辞め時だろう」と考えていたと思います。しかし、私の中に葛藤は一切なく「続ける」しかなかったため、そのためにどうしたらいいか、問題を一つ一つ解決していく毎日でした。
ありがたかったのは、被災によりベビーリーフが生産できない私たちに、果実堂が原体を無償で提供してくださったこと。これにより出荷先に迷惑をかけず、従業員の雇用を守ることができました。これは、会社を継続できた大きな要因の一つでした。
さらに、地域の人が私たちの会社を見ていてくれたことも嬉しかったです。地元の農業法人から「一緒にやろう」と声を掛けていただき、国・自治体への補助金の働きかけを行いました。補助金によって復旧のスキームが整い、約8カ月でハウスを立て直すことができました。ちょうどそのタイミングで、新たに遊休ハウスを探し、農地の拡大にも着手しました。結果として、被災前と比べて倍近い規模の農地で栽培できるようになりました。
この経験を通じて、地域に恩返しをしたいという思いがより一層強まりました。

今後も規模を拡大 売上5億円を目指して
現在、高瀬式高機能ビニールハウスは23棟稼働しており、生産量が安定して向上していることを実感しています。夏の暑い時期の生育スピードの違いが、他のハウスと比べて顕著に感じられます。冬季は降雪の影響を受けるため熊本での14回転には及びませんが、東北エリアでも12回転を実現しました。これからも高瀬式ハウスを採用することで生産量の向上を確信しています。
夢実堂は、令和元年東日本台風で被災した後、初めて経営理念『夢実る大地を未来につなぐ』を掲げました。漫然とではなく、目標を定めた経営をしたい、という思いの現れです。会社を夢実る場所にし、従業員とその家族を含めた地域の人、地域の農地を未来へとつなぐ会社になりたい。そのためには、もっと会社として成長していかねばなりませんし、規模を拡大し、売上も3億円、5億円としたいと思っています。
もし被災後に諦めていたら、今の夢実堂は存在していなかったでしょう。高瀬さんと果実堂を信じてきたからこその結果です。高瀬さんと関わることで、「中途半端な気持ちではやれない」という覚悟が強くなりました。また、地域の皆さんが私たちを見守り、困った時には手を差し伸べてくれたからこそ、今こうして頑張ることができています。
これからは、地域への恩返しの思いを胸に、経営を続けていきたいです。
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「新しく農業を始めたいが何をすれば…」「経験や勘に頼らず収穫量を多くしたい」といった農業に関するお悩みをお持ちの方に、解決法をご提案いたします。
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弊社担当者から
被災したと聞いた時は、「ここで終わってはダメだ」という思いを伝えました。これからどんどんスケールが大きくなる企業ですし、そうしていかないといけない、と。そのためには原体の供給といった災害支援についても、「助ける」の一択でしたね。仲間として、これからも一緒に頑張っていきましょう!